Chaos金太郎

移住10年目。新潟県柏崎の山間の集落を存続させるため活動中。

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倭建命(ヤマトタケルノミコト)の凶暴性を、説明できちゃうのがカッコイイ!

   

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私は神主をやっているので、当然、日本神話が好きです。中でも古事記が一番好き!もう本当に好き!痺れる!そんな痺れちゃう古事記の中から、今日は倭建命(ヤマトタケルノミコト)の凶暴性について書きます。ヤマトタケルはみなさん、名前だけは聞いたことがあると思います。日本神話に出てくる英雄ですね。

ヤマトタケルの神話

ヤマトタケルは景行天皇の子供で、幼い頃は「小碓命(オウスノミコト)」と呼ばれていました。兄がいて「大碓命(オオウスノミコト)」と言います。兄の大碓命は天皇が出席する朝夕の食事会に、なかなか顔を出しません。怒った天皇が弟の小碓命に「お前の兄に、食事会に出席するよう教え諭しなさい」と言います。しかし、大碓命はちっとも天皇の食事会に出席しません。天皇は小碓命に「どうしてお前の兄は顔を出さない。もしやまだ教えてないのか?」と尋ねます。小碓命は答えて「すでに懇ろに教え諭しました」と言います。

天皇は「どのように懇ろに教え諭したのだ?」と聞くと、小碓命は答えて「兄が厠(トイレ)に入ったところを捕まえて、掴み潰して手足をもぎ取り袋に入れて投げ捨てました」と言いました。それを聞いた天皇は小碓命の「建く荒き情(たけくあらきこころ)」を恐れて、遠くにいる天皇に服従しない敵を討つよう命じ、都から追い出しました。

 

凶暴な性格

この「建く荒き情(たけくあらきこころ)」ってのがカッコイイんだわ〜!天皇の治める秩序の世界には、収まりきらない凶暴性!日本の神話にはよく、こういった凶暴なひとたちが出てきます。私のバイブル『日本神話事典』(大和書房)には、この凶暴性を次のように書いてあります。

古代王権の宗教的超越性(国土の上に豊穣繁栄をもたらす穀霊の継承者としての霊威)の一方の極(マイナス)を開示する異端として機能せしめられた形象の一つである。生来の暴力的性向・奸智ゆえに王権の中央から疎外され周辺へ放逐された異端者小碓命は、その異端性を王権に服従しない王権外部の悪=異端の討伐に発揮させられる。

何、この説明!?かっこよすぎじゃない!?「懇ろに教え諭した」と言い、人のこと握りつぶして手足を引きちぎってバラバラにして殺害した後に、袋に入れて投げ捨てる人間のことを説明するのに、よくそこまで説明できるな!と感心します。「毒は毒をもって制す」ですね。毒も使わないと天皇の秩序を、国全体に行き渡らせることができないということです。

私が好きなのは、こういう点です。ヤマトタケルの性格が、ただ凶暴で残虐だということではなく、古事記という物語の中では意味があることとして語られる点です。物語の装置と言いますか。意味のある凶暴性なんです。とてもロジカルだと思いませんか。本当、古事記を考えた人は天才ですよ。痺れちゃう!

 - 神サマ