Chaos金太郎

移住10年目。新潟県柏崎の山間の集落を存続させるため活動中。

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移住するきっかけとなった出来事

   

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東京で生まれ育った私が、柏崎に移住するきっかけとなった出来事がありました。あれは、2006年4月、集落には溶け残った雪がまだいたるところにある、生暖かい突風が吹いていた21歳の春のこと。

当時大学4年生だった私は、春の祈年祭に合わせて、卒論の調査で集落に来ていました。祖父の集落のことを卒論のテーマにすると決めたものの、細かい内容は全く白紙。母親(母は2〜3歳頃まで集落に住んでいた)に相談したところ、「祈年祭がもうすぐあるから、とりあえず行ってみれば」と言われたので、まぁなんの気もなしに集落に来たのでした。

小学生の頃、海水浴に遊びに来ていたものの、神社の祭典に出たことはありません。そのため、その時の祈年祭がほぼ初めての祭典です。祭典が終わり、区長さんの話のあと、出稼ぎから帰ってきたという集落出身の男性が、みんなの前で挨拶をしていました。その男性は雪の残る集落を見ながら涙を流して「こここそが私のふるさとです。」と話をしていました。

その後、直会で神主である叔父の隣に座りました。集落のみんなが代わる代わる私に酒を注ぎに来てくれます。口々に「この集落はいいところだ」「子だけでなく孫にも暮らしてほしい」と話していきます。私は集落の人と話をしていて、集落への想いが伝わってきて、涙が止められなくなりました。今までで初めての体験で、本当に涙が止められないのです。周りの人も不思議に思うほどに泣きました。

それからというもの、東京に帰ってきてからも、しばらくその出来事が頭を離れませんでした。最初は「自分に何かできないか」と考えて、そのうち「自分は集落のことを守るために生まれてきたのではないか」と考えるようになりました。いろんな人に相談しました。が、兄から「もう答えは決まっているはずだ。」と言われ、移住を決意しました。

決意をした2006年5月31日の深夜、記した日記にはこう書いてあります。

「自分でもこの道を進むとは思っていなかった。不安もたくさんある。けど意志の弱さにムチを打ち、行こうと思う。自分にしかできない事だから。」

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