味の新時代スタンダード
2017/03/10
これからの時代の味は「舌」で感じる食味だけではなく、もっともっとこれまで以上に、「頭」でも感じる時代です。
頭を使って食べる
昨年の11月のこと。食べ物つき情報誌『東北食べる通信』を創刊し、一般社団法人「日本食べるリーグ」を創設した高橋さんとパネルディスカッションした際に、出た言葉です。
「頭を使って食べる」
農業、漁業、酪農など一次産業の裏側にあるストーリーを知ることで、食べ物が美味しく感じられるようになると。
例えば、トマトが大苦手だった女の子が農家と仲良くなり一緒にトマトを育てることで、嫌いだったトマトがバクバク食べられるようになる。
苦手だった日本酒が飲めるように
今年の冬から、空いた時間を利用して柏崎の阿部酒造で日本酒の仕込みの手伝いをさせていただいています。
種麹をきる金太郎。
今まで日本酒は正直あまり得意ではありませんでした、神主なのに笑
しかし、自分で仕込んだ日本酒は美味しく飲めたんですよね。その時飲んだ日本酒は辛口淡麗で、けっこう日本酒らしい味がしたんですけど。汗水流して、日本酒作りに関わったからでしょう。美味しかったです。
工程が進むと、酵母がアルコールを作る際にガスを吐き出します。「プチプチ」とガスが出る音がして、酵母の生き生きとしたさまを感じるんです。
蔵には麹、酵母など生き物がいっぱい。
おいしいお酒とは
お酒つながりで言えば、漫画『もやしもん』にこんな話もあります。
うまい酒を知りたいという主人公に対して、バーで働く美人の先輩が答えます。
体調はいいか
語れる仲間はいるか
心配事は片付けたか
ひょっとしたらおいしいお酒ってのは舌でかんじるものだけじゃないんじゃないかな
同じアサヒスーパードライでも、愚痴を言いながら飲むのと、大切な人とくつろぎながら飲むのではうまさが違いますもんね。
味覚に自信がなくても分かる
先日のnicotto収録での事。
アナウンサーの梨本さんに、イーリーカフェのオリジナルブレンド2種類を味比べしてもらいました。ブレンド名を伏せた上で。
コーヒーの味の違いがわからないと言っていた梨本さんですが、オリジナルブレンドそれぞれのストーリーを話したところ、見事正解されました。
「ストーリー通りの味だったから、わかりました」と。
味覚を超えた美味しさ
私は神社で祭りを終え、直会で酒をたくさん飲み帰り道に、神職の装束で下駄を「カランコロン」言わせて集落内を歩くのが好きです。
「きっと大昔の人も、同じようにみんなでお酒を飲んで酔って良い気持ちで、こんな風に下駄を鳴らして歩いたんだろうな…」と思うと、とても感動します。
家に着くと満足感に包まれ、どんなに大酒飲んでも二日酔いにはなりません。「美味しかったな、良い時間だったな」と思い返します。
その場で飲み食いしたものって、味うんぬんじゃないですよね。集落の人たちが楽しそうに話している。家族も同席している。人々が酒瓶を持って注ぎに来てくれる。味覚を超えた美味しさがあるし、満足感があります。
頭で食べるものを作りたい
きっとこれからの時代、頭で食べるものがもっと必要になると思います。
ってか、単純に味だけで勝負するのはもう難しいでしょう。だって単純に味だけおいしいものは、今の日本には溢れていますから。
金を出せば味わえる美味しいもの、舌だけで感じる美味しいものでは戦えない。
もちろん、頭だけじゃだめですよね。舌で感じる部分が基本的に美味しくないといけないのは大前提です。
ストーリーを伝えて、頭で食べてもらうものを作りたいです。