Chaos金太郎

移住10年目。新潟県柏崎の山間の集落を存続させるため活動中。

*

日本神話における食料の起源を見ると、スサノヲも「赤米じゃ無理ゲー」と仰せです。

   

こないだ、怠惰にも「赤米を食って生きていけない?」と、無理な話をしてみました。農作物って不思議だなぁ、と思い至ったのですが、私は神主なので、神話にも答えを探してみました。

食料の起源を語る神話として、古事記にはこんな一節があります。

2015-12-03 0 49 15

食料を正しい姿にするため、殺される神様

神々は大宜都比売神(オオゲツヒメノカミ)に食べ物を求めた。すると大宜都比売神は鼻・口と尻から様々な美味なものを取り出して、様々に料理して盛り付けて差し上げる時に、速須佐之男命(ハヤスサノヲノミコト)がこの様子を伺っていて、汚くして差し上げるのだと思い、たちまちその大宜都比売神を殺してしまった。殺された神の身体に成ったものは、頭に蚕が成り、二つの目には稲の種子が成り、二つの耳には粟が成り、鼻に小豆が成り、女陰には麦が成り、尻には大豆が成った。

似たような神話は、他国にも、たとえばメラネシア、インドネシア、南米にもあり、「ハイヌウェレ型神話」と言われています。

大宜都比売神は殺害前は口、鼻、尻から取り出したものを、料理してすぐに食べられるものとして出していました。殺害後は蚕、稲の種子、麦など、人間の手による栽培を経て、加工、調理といった労働が必要な状態の食べ物に変化しています。つまり、この世の食べ物は、大宜都比売神殺害前は労せず食料を得ることができていたが、殺害後は労働が必要になったということです。

スサノヲは大宜都比売神がすぐに食べられるものを出しているのを見て、この神を殺害しています。つまり、人間がすぐに食べられる形で食料が出されるのは、この世のものとしてふさわしくなく、食料を得るには労働を伴う必要があるとして、大宜都比売神を殺したのです。ハイヌウェレ型はどれも同じような話なので、人間が食べるものは労働して手に入れるものだ、と昔の人は考えたのでしょう。

あるがままではダメ、食料とは人間が手を加えるべきもの

食料を得るために伴う労働といえば、植物の栽培が挙げられます。自然物である植物に、人間が積極的に関わるということです。農作物はスサノヲが大宜都比売神を殺害したことから、人工的な栽培という過程が必要であると、神話的にも宿命づけられているのです。

あるがまま、自然のままの赤米を食べていくのは、スサノヲが「無理ゲー」と言ったのです。

 - 神サマ