Chaos金太郎

移住10年目。新潟県柏崎の山間の集落を存続させるため活動中。

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気仙沼ニッティングに書かれていた「市場の感覚」ということ

      2015/10/04

先日、宮城県の気仙沼に行ってきました。観光ではなかったので、あまり街を見て回ることはできなかったのですが、初めて見る街に興奮してきました。気仙沼は遠洋漁業の街で、見たことのないデカさの漁船がありました。リアス式の山が海岸線に入り組んでいて、山が海を囲っているような感じです。海岸線を走っていると沖がどっちの方向かわからなくなるほどに入り組んでいます。私が住む柏崎も海の街ですが、かなり印象が違います。所変わればなんとやらです。

今、気仙沼では震災で沈下した地盤をかさ上げ工事している最中で、ダンプカーがひっきりなしに走っていて、活気があるように感じました。震災前から活気がある街だったのではないかと思います。かさ上げが終わらないと地盤沈下した土地には建物が建てられないそうです。中にはかさ上げが始まる前に、「とにかく復興を」ということで、かさ上げを待たずに工場を復興してしまった会社があったそうで、今ではその会社の建物はかさ上げの盛り土に囲まれていまっています。

さて気仙沼には、セーターやカーディガンなどを作っている「気仙沼ニッティング」という会社があります。社長は御手洗 珠子という女性。御手洗さんはマッキンゼーでコンサルタントとして働いた後、ブータンで首相フェローという役職で観光産業の育成をします。東日本大震災の後に「ほぼ日」の糸井重里さんと気仙沼ニッティングを作ります。

気仙沼ニッティングが、一番最初に売り出した完全オーダーメイドのカーディガンは、なんとお値段が151,200円。4着のみ限定発売のところ、100件の申し込みがあり抽選になったそうです。注文者と編み手との手紙のやりとりがあり、心の触れ合いがなんとも今の時代にぴったりの会社です。

「震災後の気仙沼の人々との心の触れ合い」「復興支援」という話題性では、そのうち商品は売れなくなると思うのですが、この会社のすごいところはすごいタレントを揃えてきっちり商品を作りこんでいることです。かつて編み物が有名だったアイルランドのアラン諸島に取材に行き、売れっ子編み物作家の三國万里子さんがデザインを出がける。糸井重里さんがキャッチコピーを書く。完璧じゃないですか。売れないワケがない。

御手洗さんが書いた「気仙沼ニッティング物語」にはこんな一節があります。

 自分たちが「市場の感覚」を無くしてしまわないようには、いつも気をつけてようと思っています。いまはどんな服がどんな価格帯で売られているのか、街を歩く人はどんなものに目を留め、なにに心惹かれ、暮らしの中ではどんなことを大切にしているのか。そうした感覚が、小さな街にいて限られた人たちにしか会わない生活をしていると、偏ってくることがある。この点はいつも気をつけていなければいけません。
よく地方発の商品で「うちの街自慢の○○をつかったスイーツです!」とか「○○名産の魚でつくったハンバーグです」などと売り出されている商品が、あんまり美味しそうに見えないことがあります。これは作り手が「お客さん目線」を失ってしまい、自分の都合で商品を考えてしまっているから起こることではないでしょうか。「うちの街名産の○○を推したい」というのは、地域に貢献するいい発想のように聞こえますが、お客さんにとっては「知ったこっちゃない」ことかもしれません。お客さんはきっと、ただ美味しいものが食べたい。もちろん大都市でもありえることですが、お客さんから遠いところで商品を考えると、こういう落とし穴にはまりがちだと思います。地方でビジネスをする上で不利になる点はお客さんの目線を忘れがちになることだとも言えます。

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「市場の感覚」は、地域活性化でも必要な感覚です。地域の存続をかけて、ものを売る、サービスを提供するのなら、人から必要とされることが大前提です。心の触れ合いはもちろん必要ですが、地域のためにイイことをしている、想いがたくさんつまっている、だけでは続かないのです。ってか、やるんだったらカッコよくて、ワクワクして心惹かれるモノを作りたいっすもんね。

気仙沼ニッティングはものもかっこよくて、かつ編み手との心の交流がある。気仙沼の街にも行ってみたくなる。良い会社ですね。死角なし。覗いてみてください。

気仙沼ニッティング

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